2025/11/03 08:00
復職支援の実務ポイント ―「職場に戻る」だけがゴールではない
「うつ病で休職していた社員が、来月から復帰できる見込みです。復職についての計画を立ててみたのでご確認いただけますか?」先日、企業の人事担当の方からこんな相談を受けました。復職支援は「復帰できる」ことがゴールではありません。むしろそこからの“再スタート”こそが大切です。
そこで今回は、復職時に会社として出来る事についてお伝えします。
段階的な復帰計画を立てる
復職時にまず大切なのは、復職プランを作成することです。ご相談者である人事担当の伊藤さん(仮名)はメンタルヘルス不調で1年休職されていた方の復職について、以下のように計画を立てていました。
◆初期(1~2週目)
勤務時間:1日2~3時間程度
勤務日数:週2~3日から開始
内容:負担の少ない作業、雑務・補助的業務中心
目的:出勤習慣・体力リズムを戻す
◆中期(3~6週目)
勤務時間:4~6時間に延長
勤務日数:週4~5日へ段階的に増やす
内容:少しずつ本来の業務を組み込み、責任や納期が重くないタスクを中心にする
目的:集中力・業務遂行能力の安定確認
◆後期(7~8週目以降)
勤務時間:フルタイムに近づける(6~8時間)
勤務日数:週5日へ
内容:本来の業務に徐々にシフト
目的:フル勤務を無理なく継続できるかの確認
無理のない、丁寧なステップですよね。
多くの方は、休職前とまったく同じ状態で戻ってくるわけではありません。おおよそ6〜8割ほどのコンディションから再スタートするため、職場がその前提を共有し、少しずつリズムを取り戻していけるよう見守ることが大切です。そのため、上記のような段階的な復職プランを計画することをお勧めします。
私は伊藤さんに、復帰される方が再発して再び休職することのないよう、いくつかの工夫を加えるとより良いサポートになりますとお伝えしました。
そのポイントが、次の6つです。
現場でできる6つのサポート
① 出勤時間を「通常時間」に合わせる
うつ病の方は午前中に体調が崩れやすい傾向があります。そのため、午前中に出勤できるかは回復の重要な指標です。もし朝の出勤が難しい場合は、焦らず復職についての再評価を行いましょう。
② 生活リズム表で「自分の体調を見える化」
復帰後1か月ほどは、睡眠・食事・活動を記録する「生活リズム表」をつけてもらうと良いでしょう。自分のリズムを客観的に見返すことで、体調の波に気づきやすくなります。
③ 面談のタイミングを「波」に合わせる
多くの方は1か月後・3か月後・半年後・1年後に再発リスクの波が来ます。その前後に面談を設定し、状態を一緒に確認できるようにしておくと安心です。
④ セルフケアの学びを取り入れる
復職は「自分のペースを取り戻す」期間でもあります。厚生労働省の「こころの耳」では、5分で見られるセルフケア動画がありますので、これらを活用しながらストレス耐性を高めてもらうようにしましょう。
⑤ 職場の接し方:「特別扱いせず、自然に」
「無理をさせないように」と気遣いすぎると、本人が“腫れ物扱い”と感じて焦ることも。普通に接し、できることがあれば少しずつ任せていくことが大切です。
⑥ 行動の変化に早く気づく
もし「眠らなくても大丈夫」「自分は何でもできる」といった高揚が見られたら、うつ病の再燃ではなく、別の状態(躁状態など)の可能性もあります。迷ったらすぐ主治医や産業医へ相談するようにしましょう。
復職支援は「伴走」
復職とは、心と体のバランスを取り戻しながら「働く生活」を少しずつ再構築していくプロセスです。大切なのは、“職場に戻ること”そのものよりも、“戻ってからの日々をどう支えるか”という視点です。
復帰初日をゴールとせず、「1か月後、3か月後、半年後」と中長期で状態を見守り、小さな変化にも気づきながら、一緒に歩んでいく――。それが本当の意味での“復職支援”だと思います。
当社ではメンタルヘルス不調者が休職される時の人事様の対応についてのご相談や、復職支援プログラム作成、復職時の面談、不調者へのセルフケア研修などについて対応することが可能です。